No.372 ぼろ・ボロとBORO。

 

先日何気に朝日新聞朝刊の広告を見ていて、浅草寺の隣にある私設美術館「アミューズミュージアム」が建物の老朽化に伴って開館10周年を区切りとして3月31日で閉館する事を知りました。

運営母体のアミューズは、サザンオールスターズや福山雅治やパフユームを抱える一大プロダクションです。

このミュージアムは、「日本文化を楽しく伝えたい」というアミューズの創立者・会長である青森出身の「大里洋吉」さんが、同郷の歴史民俗研究家である「故・田中忠三郎」さんとの“縁”から田中コレクションを常設展示している私設美術館です。

 

田中コレクションは、「田中忠三郎」が長く最貧の地であった、青森の農村部に伝わる何世代にもわたって、つぎはぎを重ねて分厚い布塊と化した夜具や衣類である古布の「ぼろ」を「遠い昔の負の財産」と無視されてきた地元青森で、非難と中傷と戦い又変人扱いされながら、20代から晩年までの50年以上に渡り、県内の集落をただひとりで山村を巡って「ぼろ」を約2万点収集した、学術的価値はもちろん芸術的価値も高い稀有なコレクションとして知られています。

以前からこのミュージアムの存在は知っていたのですが、この広告記事を読み閉館前に是非本物の「ぼろ」を観たいと思い立ちました。

 

館内は、長持ちさせるために布を継ぎはぎし、代々受け継がれてきた「ボロ」などをモダンな空間に飾り、実際に手にしたり着たりできました。

まさに「これこそ文化財」と称賛されている通りでした。

海外でもファッションの世界において、デザイナーから日本の「ボロ」などの古布は、「奇跡のテキスタイル・アート」と呼ばれ発想の原点としてその「BORO」をモチーフにしています。

 

又こちらに来て知ったのですが、「黒澤監督」の依頼で映画「夢」の撮影に衣類約300点を提供した事や、津軽三味線の第一人者である「高橋竹山」に“変人”扱いされていたことに同情された“縁”で知り合い、のちに版画家の「棟方志功」は、田中を介して竹山を知り意気投合した事で「天才は天才を知る」と感心した事、歌人の「寺山修司」が映画「田園に死す」のロケで田中の古民家に泊まり込んだ事など多々あるエピソードにも興味を覚えました。

閉館日まで「美しいボロ布展」が開催されています。お見逃しなく!

 

閉館後の4月以降は、米国・欧州・中国・豪州など世界各国で巡回展を行い、その後日本国内での新アミユーズミュージアムの開館を検討しているそうです。今からその反響からの展開が楽しみです。